深夜  ビバリーヒルズワーフ   刃の倉庫にて


俺様は今、とんでもなく腹が立ってる。
サムとラリーがバッグを盗んだ相手に、逆にやられちまったらしい。
しかもクールJの腰抜けは逃げちまうし、ウォンのクソガキはバッグの場所を教えちまったそうだ。
俺様は無論、そんな腰抜けや甘ちゃんをヘヴンズのメンバーに入れたつもりはねえ。


「クソッ!」


俺様は地面を意味もなく蹴った。
イテェ・・・・・・・クソ、何だってイラついてる時ってのは決まってついてねえんだ!
俺様は汚れる背中も気にせずに、倉庫のちょうど真ん中位の所に寝転ぶ。
何となく天井をボーっと見上げる。
見つめ続けると、まるで吸い込まれそうな暗闇が広がってる。

何だか気分が悪くなって来やがるぜ。


「・・・・・・・寝るか。」

そう言い、目を閉じた刃はすぐ考え事をしだした。

・・・・・・・・・待てよ?
そもそも、何で俺様はこんなにイラついてんだ?

サム、ラリーが弱いから・・・違う。
クールJが逃げるから・・・違う。
ウォンがバッグを返しちまうから・・・違う。
どれも違う気がする・・・・・・。

じゃあ、何でイラついてんだ?
そもそも何で俺様はこんなくだらねえ事で深く考えてんだ?
何だか頭ん中が混乱してきやがった。


キイ〜.......。


突然の倉庫の扉が開く音。
刃は素早く体を起こし、扉の方を睨みつける。

暗くてよくわからねえ・・・・誰だ?
足音だけが不気味に倉庫の中に響き渡る。
刃はナイフを取り出し、右手に構える。


コッ.....コッ......


足音が止まる。
・・・・・・メンバーの誰かが勝手に入って来やがったか?


「おい!誰だ!?俺様の倉庫に勝手に入ってくるたあ、いい度胸だな?」


返事はない。
侵入者か?
俺様とした事が、少し不安になってきてやがる・・・・。
倉庫の中、居るのは俺様と勝手に入って来やがった誰かだけ・・・・。
侵入者だとしたら今日は、マジでとことんついてない日だぜ。


「刃。」


いきなり後ろから自分を呼ぶ声。
刃は後ろに素早く振り返り、ナイフを正面に突き出した。


「キャッ!」
「キャ?」


女、しかも聞き覚えのある声である。


「ちょ、ちょっとー!危ないじゃんか!」 「・・・・・ジョイか?」
「ジョイかじゃないよ!いつまでナイフ突き出してんだい!!」


侵入者の正体はジョイだった。
全く驚かせやがるぜ。
やれやれといった表情をしながら、刃はナイフをポケットに戻した。
ジョイは恨めしそうに刃を見ている。


「いきなりナイフなんか出すんじゃないよ!危ないじゃんか!」
「うっせえ!テメエが返事しねえからだ!」


暗闇の中に、二人の声が響き渡る。
やっぱり今日はとことんついてねえ日だ、間違いねえ・・・・。


「フンッ!アタイはちょっと脅かせようとしただけさ!何さ、そんな事でナイフまでだしちゃって!」
「うるせえ!用がねえんだったらとっとと出てけ!俺様は今考え事してんだ!!」
「考え事って?」


・・・・・余計な事言っちまった。
いちいち言う事なかったじゃねえか。
お節介なこの女の事だ、どうせしつこく食い下がってきやがるだろうな。


「ねえ、考え事って何さ?」
「だあ〜!うっせえ!!用がねえんだったら帰りやがれ!!」
「・・・・用ならあるよ?」
「何だ?」
「刃の考え事が何なのか知る事。」


・・・・・喧嘩売ってんのかこの女?
結局用もねえ癖に、単に俺様を脅かしに来ただけって事だろうが・・・・!
全く暇な女だぜ・・・・・。


「テメエには関係ねえだろうが、さっさと出て行きやがれ!」
「あんたの考え事ってのを教えてくれたらね。」
「ケッ!一生言ってろ!バカ女!!」


話すのが面倒になった刃はそう言うと、倉庫の外へと歩いていく。
こんな風にからかわれたら、彼じゃなくても少なくともいい気分にはなれないに決まってる。


「あ!ちょっと待ちなよ刃!冗談だってば!用があるに決まってんじゃん!」
「あ?」


刃は出口の扉の前で立ち止まり、慌てた様子のジョイの方向を振り向返る。


「用があるんならさっさと言いやがれ!!」
「何よ!ちょっとからかっただけでムキになっちゃって・・・・。」
「テメエがわりいんだろうがテメエが!」
「ハイハイ、私が悪かったね!ゴメンゴメン!」


相変わらず、勘に触る女だぜ・・・・・。
とっとと用件を言えってんだ。


「で?用件ってのは何なんだ!?」
「ウォンがあんたを呼んで来て欲しいんだってさ。」
「ウォンが?」
「ああ、さっきから外で待ってるんだよ?」


ウォンの奴、一体こんな時間に何の用だ?
しかもいちいちジョイに俺様を呼ぶように頼むたあどういう事だ?
まあ、ウォンに会えばわかる事だ。


「ウォンの奴は、外で待ってんだな?」
「ああ。」


ジョイのその返事を聞き、刃は出口の扉を開ける。
月明かりが刃と倉庫の中をかすかに照らす。
刃は大きな欠伸をしながら、面倒くさそうに外へと出て行った。



                               ++++



「今日は妙に冷えやがるな・・・・。」


倉庫の外へと出と同時に、冷たい風が吹き付ける。
外はほとんど何も見えないと言っていいほど、暗闇に包まれている。
月明かりが周りをかすかに照らし、全く見えないという事態は避けているような状態である。
刃は辺りを見回し、ウォンを探す。


「おいウォン!どこだ!」
「・・・・・ここだよ。」
「ん?」


何故か上の方からするウォンの声に気付き、刃は声のする方へと首を向ける。
刃の目線の先でウォンが、倉庫の屋根の上で座りながらこっちを見下ろしていた。
月明かりの為に、暗闇の中でもはっきりと姿が確認出来た。


「ウォン!一体何の用だ?」
「あ・・・・うん・・・・。」


音も立てる事なく、ウォンは静かに地面へと倉庫の屋根から着地する。
刃はウォンへと一歩一歩近づいて行く。
そしてちょうど真正面、ウォンを見下ろすような形で刃は足を止めた。


「で?用ってのは何なんだ?」
「・・・・・・・・。」
「おい!さみいから早く済ませろ!一体用ってのは何なんだ!?」
「・・・・・・謝りたかったんだ。」 「・・・・・・あ?」
「俺が盗んだ奴に見つかって逃げたんだけど、追いつかれて・・・・・。」 「サムとラリーがやられたんだろ?」


ウォンは下を向いたまま、首を縦に動かす。


「で?それで何で俺様に謝るんだ?」
「え・・・だって・・・・。」
「何だ?」
「俺のせいで・・・二人が怪我しちゃったから・・・・。」
「しちゃったから?」
「刃はヘヴンズのリーダーだろ・・・・・、だからメンバーに怪我を負わせた事を謝りたくて・・・・。」


ハア?どういう意味だ?
あいつらが怪我したのが、お前に原因があるにしても俺様にゃあ何の関係もねえだろうが。


・・・・・・・・・・待てよ?


さっき、俺様はサムやラリー、クールJにウォンの奴らの事でイラついてた。
関係ねえはずなのに、そういう俺様こそ、何でそんな事気にしてんだ?
いざとなったら仲間だって蹴落とす。
俺様は今までも、そしてこれからもそう生きていく筈だ。
人の心配?俺様がそんな事する訳がねえ。
だったら何で俺様はイラついてたんだ?関係ねえん筈だろ?
クソッ・・・・また頭の中が混乱して来やがった。


「とにかく、テメエのミス何か俺様は知ったこっちゃねえんだよ!」
「わ、わかったよ・・・・。ご、ごめん。」


ウォンはそう言うと刃の横へ通り過ぎ、暗闇の中へと走り去って行った。


「クソッ!何か腹の立つ日だぜ・・・・!」
「あんたも意地っ張りだねえ、刃。」
「あ?」


いつの間にか倉庫から出ていたジョイが刃の後ろに立っていた・・・・。


「ウォンの奴、あんたの事を親代わりに思ってるんだよ?。」
「ハア?何だそりゃ?」
「いや・・・・ウォンだけじゃなくて、ヘヴンズのメンバーは全員そう思ってんじゃない?」
「ケッ!意味わかんねえ事言ってんじゃねえ・・・・!」
「メンバーを自分のせいで傷つけちゃったって事で、親代わりでもあるあんたに申し訳なく思ってんだよ?」
「・・・・・・・・・・。」

あいつらが?俺様を親代わりに思ってる?
本当にそうなのか・・・・・。
俺様はいざとなったら、あいつらを利用するかも知れねえんだぞ?
自分達にとって都合がいいから一緒になっていただけと思ってた・・・・・。
だとしたら俺は・・・・・・・。


「・・・・・・・ジョイ。」
「ん?」
「その・・・・なんだ・・・今度ウォンの奴に会ったら、俺様が悪かったって言ってたって伝えといてくれ・・・・。」
「・・・・・・プッ!」


それを聞いたジョイは思わず吹き出す。


「テメエ!何笑ってやがんだ!!」
「あはは!だって・・・刃がそんな事言うなんて思わなかったからさー。」
「・・・・・・・とにかくウォンに伝えとけ!!いいな!!」
「ハイハイ、わかったよ。」


ジョイの返事を聞くと、刃は赤くなった顔を隠すように下を向きながら倉庫の中へと戻って行った。


「全く・・・素直じゃないね。」


倉庫の中で一人、佇む刃・・・・・・。
人の心配をしても馬鹿を見るだけだと思っていた自分・・・・・。
そんな自分が人に心配されたり、本気で謝られる何て思ってもなかった。

少しは・・・・・メンバーの事を考えてやらねえといけねえかな・・・・。




・・・・・・・・・・ハッ!?何考えてんだ俺!?
俺様ともあろうものが・・・・・!?
・・・・・・・・・・。


「ああー!クソッ!!やめだやめだ!!考えたってイラつくだけだ!!」


そう言いながら、刃はその場にドサッと寝転ぶ。
いくら考えても出せぬ答えをそのままにし、眠りにつく事にした刃。
忘れかけていたかもしれない感情を胸に抱きつつ今日のところはお休み・・・・。

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